映画ペディア
Advertisement

皇帝のいない八月』は、小林久三による小説およびそれを原作とする1978年公開の松竹製作の映画

(原作) 4月。青森県国道4号線における謎のトラック事故、その翌日靴メーカーに勤務する石森宏明はブルートレインさくら」への乗車を妨害しようとする謎の一団に狙われる。暗躍する一団の靴にはある特徴があった。また車内には突如姿をくらましていたかつての恋人、杏子が乗り込んでいた。姿を現す巨大な陰謀に、石森の脳裏にはかつて「死の商人」ともいうべき総合商社に勤めていた過去の、夏の日の光景が甦るのだった。 松本清張の系譜を受け継ぐ、「社会悪」を抉り出す社会派推理小説の一種にして、鉄道ミステリの変形。新風社文庫版のあとがきによれば、自衛隊のクーデター計画があったと聞かされたことが執筆の原因であると作者は述べている。

(映画版) 保革伯仲し与党内でも分裂が危ぶまれる政局不安定な暑い夏(原作は4月)、右翼政権樹立を武力クーデターで一気に目指す自衛隊反乱分子とそれを秘密裏に鎮圧させようとする政府の攻防を描くポリティカル・フィクション。物語の中心部分は、クーデター当日の夜に藤崎顕正元1等陸尉率いる少数精鋭の部隊に乗客乗員ともども乗っ取られたブルートレイン「さくら」の車内が舞台となり、和製『カサンドラ・クロス』の趣で作られた列車パニック映画ともなっている。

出演[]

  • 渡瀬恒彦:藤崎顕正(元一等陸尉・クーデター実行部隊藤崎隊隊長)
  • 吉永小百合:藤崎杏子(顕正の妻)
  • 山本圭:石森宏明(杏子の元恋人)
  • 滝沢修:佐橋(首相)
  • 佐分利信:大畑剛造(クーデター計画の黒幕)
  • 高橋悦史:利倉保久(内閣調査室長)
  • 太地喜和子:中上冴子(大畑の愛人)
  • 渥美国泰:黒須(官房長官)
  • 小沢栄太郎:小山内(建設大臣)
  • 永井智雄:山村(防衛庁長官)
  • 松本克平:若生(文部大臣)
  • 久米明:河崎(通産大臣)
  • 浜田寅彦:曽根(大蔵大臣)
  • 内藤武敏:浜尾(労働大臣)
  • 鈴木瑞穂:真野陸将(クーデター計画首謀者の一人)
  • 岡田英次:徳永陸将補
  • 三上真一郎:小森一尉(藤崎隊隊員)
  • 永島敏行:矢島一曹(藤崎隊隊員)
  • 橋本功:島三曹(藤崎隊隊員)
  • 風間杜夫
  • 河原裕昌
  • 磯部勉
  • 塚本信夫
  • 勝部演之
  • 伊藤克
  • 浜村純
  • 嵯峨善兵
  • 神田隆
  • 森田健作:有賀(毎朝新聞政治部員)
  • 神山繁:正垣(毎朝新聞政治部長)
  • 大滝秀治:野口(福岡の製靴メーカー社長)
  • 渥美清:久保(乗客)
  • 岡田嘉子:金田(乗客)
  • 泉じゅん:ユミ(乗客)
  • 園田裕久:車掌
  • 橘麻紀
  • 森あい
  • 岡本茉莉
  • 中島ゆたか:紀子(バーのホステス)
  • 香野百合子:石森千秋(宏明の妻)
  • 丹波哲郎:三神陸将
  • 山崎努:東上正(元一等陸尉・クーデター実行部隊東上隊隊長)
  • 三國連太郎:江見為一郎(陸将補・杏子の父)

映画版あらすじ[]

テンプレート:ネタバレ アメリカに媚を売り、腐敗しきっている自民党の現政権に対して、自衛隊と結んだ右派系の元首相一派が自衛隊の最高幹部とともにクーデターを計画する。

目的は自衛隊を国防軍に再編成すること。そのために軍事力で政府を制圧し、内閣総理大臣を拘束、憲法改正を断行する。ここにCIAが戦略・情報・人脈を使って介入してくる。

だが、そこで登場したのが内閣情報調査室室長。彼がすべての情報を探索し、官邸から自衛隊の統帥を指揮し、クーデターを制圧せんとする。

だが、実はとんでもない大どんでん返しが待っていた…。

エピソード[]

  • 原作ではタイトルの意味は特に明らかにされない(石森の回想でおぼろげに想像させるだけに留まっている)。
  • 当初、映画版で主役(原作ではあくまでも脇役)の藤崎役には渡哲也のキャスティングが想定されていたが、所属の石原プロが自ら製作しているテレビドラマ中心に起用する方針を曲げず、そのスケジュールを解放しなかったために断念(同時期の角川映画人間の証明』も同様の理由で渡の起用を断念)。そして白羽の矢が立ったのが実弟の渡瀬恒彦。それまで東映でヤクザ役やチンピラ役など粗暴な役が多かった渡瀬は、信念を持った元自衛隊エリートの反乱分子のうちなる狂気を見事に演じきった。
  • 松竹映画だけに、渥美清が『男はつらいよ』の車寅次郎“らしき”人物で出演。らしき、というのは、劇中でその名は名乗っていないが、ブルートレイン「さくら」の寝台車で一人旅の途中で、唯一素性を表す台詞「まだ結婚してないんですよ」というのがあるから。それは誰が見ても「寅さん」だと思わせるものの、粗野な振る舞いはなく、かなり内気で上品な言動なのは演出の違いか?
  • 興行成績はそれほどではなかったものの、後にカルト的人気を博す。とくにアニメ監督として著名な押井守に多大な影響を与えた。押井が演出や脚本を手掛けた『機動警察パトレイバー』の自衛隊クーデターものエピソードには、オマージュ以上のものがこの作品から得られている。
  • 列車パニックものの映画では、東映が『新幹線大爆破』(1975年)、東宝が『動脈列島』(1975年)などを制作していて、この作品はそれらと比較対象されることもある。
  • 上記の諸作と同様、内容が内容だけに国鉄(当時)の協力は得られず、「さくら」の車内はすべてセットで撮影された。車両などの考証はかなりお粗末で、爆破シーンでは大正時代設計のイコライザ台車TR11らしき台車を装備していた。また「さくら」号を最後に爆破させたということで国鉄は大激怒し、「以後、国鉄は映画には一切協力しない」とまで決定した。
  • 本来は円卓のある会議室で行われる政府の閣議の撮影セットを、マスコミの写真撮影用に用意されている、ニュース映像などでおなじみの閣議の控え室を元に作り、失笑を買った。

自衛隊の反乱を主題とした作品[]

  • 時計仕掛けのりんご』(手塚治虫
  • 亡国のイージス』(福井晴敏
  • 沈黙の艦隊』(かわぐちかいじ
  • 戦国自衛隊1549』(福井晴敏
  • 軍靴の響き』(半村良
  • 戦海の剣』(天沼俊


Smallwikipedialogo.png このページには、クリエイティブ・コモンズでライセンスされたウィキペディアの記事が使用され、それをもとに編集がなされています。使用された記事は皇帝のいない八月にあり、その著作権者のリストはページの履歴に記録されています。
Advertisement